平成16年度事業報告書


平成16年度事業報告

~資料の掲載は省略させていただきます~

 

平成16年度本会事業を次のとおり報告する。

 

【会員の動向と取扱い事件の推移】

 

平成17年4月1日現在の会員数は211名である。この一年間に入会した会員は6名であり、退会した会員は9名であった。資料〔Ⅰ〕のとおりである。新不動産登記法の施行に伴う会員の減少を危惧していたが、杞憂に終わり安堵した。平成16年度司法書士試験に15名合格しましたので、今後の会員数増加に期待が持てそうである。

取扱い事件数の推移については、資料〔Ⅱ〕〔Ⅲ〕〔Ⅳ〕に記載されているとおりである。登記事件数の減少に歯止めが掛からない状態が依然として続いている。しかし、裁判外の和解については、大幅に増加し、今後も増加が見込まれる。

 

【はじめに】

 

新不動産登記法が昨年6月に成立・公布され、今年3月7日施行された。成立から施行まで短期間であったため、司法書士界内外共に十分な周知期間がとれなかった。この間、2回の研修会を開催したが、不動産登記規則・同準則が不明だったため、満足な研修とはならなかったことが残念であった。対外的には、社団法人栃木県宅地建物取引業協会・栃木県行政書士会・栃木銀行・真岡信用組合・鹿沼相互信用金庫からの要請により講師を派遣し、周知に努めた。対内的には小山支部研修会に講師を派遣した。

司法書士は、新不動産登記法に、登記義務者が登記済証(登記識別情報)を提出(提供)できない場合登記の申請の代理を業とすることができる代理人(資格者代理人)が本人確認情報を提供した場合に新事前通知制度を省略できる制度ができたことの意義を十分に理解し、登記の真正担保を担う資格者として実務を行うことがより一層求められることになった。

不動産登記のオンライン申請指定庁として、3月22日さいたま地方法務局上尾出張所が指定された。17年度は全国で100庁指定される予定とのことですので、栃木県においても2庁程指定されることが予想される。

既に、商業登記のオンライン申請庁として、2月7日より宇都宮地方法務局で始まった。商業登記のオンライン申請については、研修会を1回開催した。新年度においてオンライン申請方法等についての研修会も要望があれば検討することになる。

県内の法務局支局出張所における不動産・商業登記簿のコンピュータ化は烏山支局・氏家出張所を残すのみという状況である。コンピュータ化の進捗状況から県内の法務局支局出張所は早い時期にオンライン指定を受けることが予想される。

 

昨年、総合法律支援法並びに裁判外紛争解決手続の利用促進法が成立し、平成14年の司法書士法改正に始まる司法制度改革関連の重要法案がすべて成立したことになる。

総合法律支援法の成立に伴い、裁判所・検察庁・法務局・弁護士会と司法書士会を構成員として日本司法支援センター栃木地方準備会が発足した。2回会議が開催され、栃木地方準備会の委員長を決定し、委員長中心に準備作業が進められている。今後当会及び各司法書士は、日本司法支援センターの主な業務の中で、相談窓口(相談の受付・情報提供・関係機関等への振り分け業務等)、司法過疎対策、民事法律扶助事業、高齢者等の援助を行う関係機関等との連携の部分で協力できる役割を推進していくことになる。

裁判外紛争解決手続の利用促進法(ADR基本法)の成立を前提に、司法書士ADR機関創設のため、他団体の研修会に参加して調査研究をしてきたが、法律の内容も不明な中で思うような成果が上がらなかった。今後実施するための調査研究が課題として残った。

 

第3回司法書士特別研修を、昨年3月27日から当会会員と栃木県在住の有資格者計8名及び県外在住の有資格者等を受け入れて実施した。新たに会員8名が認定を受けた。認定司法書士は総数90名になった。

第4回司法書士特別研修は今年2月3日よりブロック単位で実施され、当会から日司連司法書士特別研修部地域部員を1名、チューターを5名派遣し協力した。今後も同様の協力が求められることになる。

多数の認定司法書士が誕生し、裁判事務への関与を高めることが将来の司法書士制度の安定に繋がることになる。

 

当会の「将来の会費のあり方」について会費検討委員会をつくり検討し、中間答申をいただき会員に意見を求めた。会員からの意見は少ない状況である。定額会費に一本化するか、現行の定額会費と事件数会費の割合を変えるか等どういう選択をしても会員に少なからず影響が出てくると思われるので、多くの会員の意見を聞きたいと考えている。

 

昨年10月5日、株式会社整理回収機構・株式会社足利銀行間の担保権移転等の登記を、司法書士会が窓口となり当会会員が登記処理をする方法で受託した。約80名の応募があり、72名の会員で受託団を結成し担当することになった。前回の宇信金の登記より複雑であり、提出法務局も広範囲に亘り報酬も安く、受託会員の作業も多く、移転する担保権及び担保物件数が直前まで確定しない、直前閲覧が予算上出来ないという状況の中で、今年3月22日に登記処理した。この種の事件は大量案件ということで県外の大手司法書士事務所が受託活動しているといううわさが流れる中で、多くの会員の協力により登記処理できたことは栃木県司法書士会としても会員にとっても良かったと言える。

 

下野新聞「日曜論壇」に昨年2月29日から8月22日まで6回投稿した。資料〔Ⅹ〕のとおり。栃木県司法書士会の活動、多重債務整理、成年後見制度、消費者問題、プロボノ活動、改正不動産登記法の紹介を中心に司法書士並びに司法書士制度のPRをした。以前投稿したくても載せていただけなかった中で、投稿の要請があったことは司法書士法改正の副産物のひとつであった。

 

新潟県中越地震の義援金協力要請に対し、会員73名から協力をいただき、新潟県司法書士会員に対する義援金520,500円、一般被災者に対する義援金542,277円、会として各5万円計10万円を加えて合計金1,162,277円を日司連に送金した。

 

綱紀事件は、処分が1件、法務局への報告案件が1件あった。新不動産登記法においては、司法書士の執務もより厳格に行うことが求められてきますので、専門実務家としての執務対応を希望する。

 

[各部の活動]

 

〈総務部〉

・常設相談会の実施

1年間の稼動日数は46日であり、総相談件数は1226件に上った。(資料〔Ⅶ〕のとおり)。一日あたりの平均相談件数は約27件であり、毎週多数の相談があることがわかる。前年度と比較すると訟務関係の相談が増加しているが、多重債務関係以外にも、消費者問題や賃貸借、交通事故の損害賠償等の相談も増えており、簡裁代理認定司法書士の認知度が徐々に高まっていると思われる。

 

・法の日の無料相談会の実施

本年度は、平成16年10月1日から7日までの間、県内各地8ヶ所並びに各会員の事務所において実施した。(資料〔Ⅵ〕のとおり)。期間内の相談者数は130名であった。相談内容としては、相続、贈与等の登記関係の相談が多かった。

 

・「相続登記はお済みですか月間」の開催

本年度は、平成17年2月1日から28日までの間に、県内各地の会員の事務所において実施した。期間内の相談者数は42名であった。

 

・非司法書士排除活動

本年度も、排除委員の方を中心とする多くの会員のご協力により、実態調査を行うことができた。調査の結果は、資料〔Ⅴ〕のとおりである。今後は、個人情報保護法も施行され、調査の実施はさらに困難が予想されるが、司法書士制度の認知度を高める活動の一環として何等かのかたちで存続について検討していきたい。

 

・職業倫理の確立

15年度に続き、3ヶ月の業務停止の懲戒処分が1件下された。会長指導の案件も1件あった。簡裁代理権の獲得の際に今まで以上の職業倫理が求められており、さらに昨今の社会における専門職の職業倫理の高まりは想像以上のものがある。業務執行に際しては、細心の注意を払って頂きたい。

 

・苦情処理に関する事業

今年度も苦情等に関しては、前年度並みであった。増加傾向はないものの、簡裁代理権の獲得による業務拡張で、例えば依頼者からの預り金等で、苦情が増加する恐れは十分にある。引き続き、依頼者に対して十分な説明義務を果たすよう、注意を喚起していきたい。

 

・紛議調停に関する事業

今年度も開催されなかった。ただし、職業倫理の高まりから、今後紛議調停案件が出される可能性は十分にあるので、十分な体制を目指して引き続き、委員の方との協議を重ねていきたい。

 

・会館管理

市民からの利用申請があり、貸し出しを実施した。

 

〈企画部〉

・裁判事務推進室

平成16年9月12日、第5回目の「クレジット・サラ金110番」を実施した。今回は初めて日曜日に開催したが、相談者数26名と過去の実績を下回った。減少した原因として、新聞に記事として掲載されなかった、統計的に破産事件が減少傾向にある、当日が日曜だった等の理由が考えられるが、当会の毎週土曜日の無料相談会において、相当数の多重債務問題の相談に応じた成果もあるのではないかと思われる。

また今年度は、多重債務事件から一般裁判事務事件を推進する目的で、「裁判事務実務体験報告会」を2回行った。これは会員が受託、解決した一般裁判事務事件の体験を報告して頂き、報告者と出席者が意見交換するとの企画であった。

また、裁判所との事務打合会を4回開催し、12月14日には「新破産法についての説明会」が行われた。

 

・制度調査研究委員会

平成16年度の当委員会の主な研究対象はADR(裁判外紛争処理)であった。

7月10日に日司連主催の研修会があり、8月4日の委員会では、「裁判外紛争解決手続きの利用の促進に関する法律」(略称ADR基本法)の趣旨説明が行われた。

11月27日には12月公布の同法についての事前説明会が日司連で開催された。出席者からは、司法書士単独の実施より、隣接法律専門職種団体との合同実施の方が、市民がより利用しやすいのではないか、弁護士法72条や報酬の問題等で活発な意見が出された。

日司連は同法に基づいた「司法書士調停センター」を平成18年年度に立ち上げるとしていて、実際の紛争解決に当たる人材の育成が急務と思われる。

 

・民事法律扶助制度の利用

平成16年度の司法書士の持込みによって援助決定された事件は23件で、そのすべてが書類作成援助であり、内容は自己破産が22件、個人再生が1件であった。昨年度の実績が11件であったので、それと比較すると倍増したことになるが、栃木県支部に割り当てられた書類作成援助の事件数が30件で、自己破産の援助要件が緩和されている現状からすると、若干物足りない実績となった。

総合法律支援法が成立し、来年4月頃には「日本司法支援センター」が設立される予定である。そうなると、民事法律扶助事業も日本司法支援センターがひき継ぐことになる。司法書士も引き続きその運営に携わることになると思われ、それまでに司法書士からの援助の申込みの実績をできるだけ多く残すことを期待したい。

 

・(社)成年後見センター・リーガルサポートとちぎ支部への支援

成年後見業務の担い手の拡充を図るため、リーガルサポートとの共催で、おもに成年後見人等の実務に関する専門研修を実施した。2日間で6科目、合計9時間の集中的な研修で、後見人としての職務を行うために必要な研修単位取得にも役立ったものと思われる。

 

・会報編集室

委員会を毎月開催し、企画・原稿の担当者割り振り・校正を行い、会報「やしお」を年6回発行した。

委員会は月初めに開催された為、そこで校正し、印刷を経て、会員の手もとに届くのは発行月の月末になってしまった。

 

・広報委員会

法の日無料相談会の新聞広告については、土地家屋調査士会との法の日無料法律相談会の新聞広告と兼ねて掲載したが、二士会の打合会において内容等検討したため、広報委員会は開催しなかった。

 

・ホームページ管理委員会

委員会の位置付けがはっきりしなかったため、委員会は開催しなかった。管理のあり方については今後の課題である。

なお、ホームページの更新は、15年度の事業報告書及び決算報告書・16年度の事業計画書及び予算書の公開、会員名簿の加除、その他の軽微な修正、について事務局並びに担当常任理事で対応したにとどまる。

 

・消費者問題対策委員会

高校生や一般市民を対象とした法律教育は、講師派遣の要請がなかったため、出来なかった。

2ヶ月に一度開催される消費生活相談員の勉強会に委員が参加するなどして、消費者問題の調査・研究を行った。

なお、県内の消費生活相談員が中心になり平成16年11月に設立された「特定非営利活動法人とちぎ消費生活サポートネット」には石原委員長が理事に就任し、また、県内の生活協同組合などの消費者団体を中心に組織する「とちぎ消費者ネットワーク」では本会に幹事の依頼があり、北條常任理事が当会を代表して運営に参加するなど、我々が想像する以上に、この問題に対する司法書士の取り組みに市民の期待が大きいことが伺えた。

 

〈経理部〉

健全財政の推進という基本姿勢のもとに、公益法人会計の原則に基づき、会計処理を行った。また、定額会費並びに事件数割会費について、適正な納入の管理に務めた。

更に、オンライン申請の導入を目前に控えた時期にあって、安定した財政基盤の確立を実現するにあたり、将来の会費のあり方について検討を加えるため、会費検討委員会を設置し諮問をした。現行の定額会費と事件数割会費という二本立て会費制度の長所・短所、定額会費一本化とした場合の利点・欠点と会費負担の増減、会費負担の公平性、様々な問題点を含んでいる。

こうした問題点を検討した経緯と現段階における委員会の考え方については、同委員会による中間答申に示された通りである。

本会では、中間答申を公表すると共に、会員各位に意見の募集を行った。しかしながら、寄せられた意見は、数件に止まっている。

会の事業執行の根幹である財政基盤に関する問題であり、早急に結論を出すことなく、次年度においても更に検討を加え、また、会員各位においても大いに関心を寄せていただき、多くの意見を頂戴し、より具体的な「会費のあり方」を探る必要性を感じている。

 

〈研修部〉

研修委員会として、全体研修会4回、専門研修会1クール(2日間)、補助者研修会1回(1日)、新人研修会1回(1日)の実施、運営を担当した。研修内容は、「研修実施内容」(資料[Ⅸ])を参照頂きたい。

 

(研修事業について)

改正不動産登記法中心の一年間であった。

簡裁代理権取得のための特別研修については、第4回特別研修以降は、日司連事業となり、ブロック単位で行われることになった。

各会員の取得単位数、支部別取得単位は別紙資料[Ⅷ]に記載されているとおりである。昨年度取得単位が所定の単位数に満たなかった(0~12単位未満)会員の数は計83名となっており、その前年度(118名)より減少した。これは不動産登記法改正等の理由により増えたものと考えられる。新年度も引き続き研修への積極的な参加を期待する。

 

・   全体研修会

4回開催した。

内容は、7月の第1回全体研修会と2月の第4回全体研修会において、それぞれ日司連から役員を招き、改正不動産登記法について解説してもらうなど、改正不動産登記法の比重が大きかった。また、政治連盟と共催で、森山真弓衆議院議員をお招きし、司法制度と司法書士についてお話しいただいた。このほか、商業登記のオンライン申請、電子認証、消費者問題、担保執行法等はいずれも法律改正にからむ研修であり、講師は司法書士の業務用ソフト開発担当者、消費者団体、学者等様々な分野からお招きした。また、個人再生手続、離婚をめぐる諸問題について、それぞれ住宅金融公庫の担当者、弁護士に講師になっていただき研修を行った。

 

・   専門研修会

成年後見について、10月の土日を利用して、2日間連続で、一日3コマ、計6コマ行われた。

 

・   補助者研修会

9月に、補助者の方々とスタッフとで、日帰り研修旅行を実施した。

 

・   新人研修会(新入会者研修)

3月に、昨年同様一日での実施となった。

 

・   支部研修会

改正不動産登記法を中心として宇都宮、栃木、鹿沼、小山の各支部で行われた。

 

・日司連主催の研修会

東京会場で開催された第19回日司連中央研修会の模様を、インターネットによるライブ中継(ストリーミング)で当会館にて受信し会員24名が参加した。内容は、「改正不動産登記法と司法書士の社会的役割」をメインテーマとし、オンライン申請において司法書士に求められる職責とは何か、について行われた。

・関東ブロック主催の年次研修会

倫理研修を中心に入会3年次、18年次の会員並びに昨年度未受講者を対象として実施された。当会の該当会員25名のうち、9名が参加した。

 

〈関連団体との交流と情報収集〉

・裁判所との定例会の開催

平成16年5月から2か月に一回の割合で都合4回事務打合会が開催された。司法書士会からは谷田部副会長、廣田常任理事、平山理事と裁判事務推進室のメンバーが毎回参加し活発な議論が交わされた。これらの活動の成果として、各委員が特定調停や破産や個人再生の申立事件の処理に頭を悩ませている事項につき、当会の各会員から挙げられた質問事項・協議事項を集約して、この打合会で協議したり又は取扱いの指針を教示してもらったりしたこと。などが挙げられる。今後も、本定例会を充実発展させる必要性を感じるところである。

 

・三士会

平成17年2月15日、土地家屋調査士会、行政書士会、司法書士会の三士業で、三士会が開催された。各会の実情などを情報交換したが、新不動産登記法が話題の中心となった。

 

・五士会

平成17年3月28日、弁護士会、公認会計士協会、不動産鑑定士協会、税理士会、司法書士会の五士業で、五士会が開催された。各会の実情等の情報交換が中心だが、日本司法支援センターの話題には、質問が集中した。当会は、新不動産登記法についての情報を提供した。

 

・宅建協会との協議会

宅建協会で開催された研修会に新不動産登記法関連で講師を派遣した。

 

・土地家屋調査士会との法の日無料法律相談会

平成16年度は当会が当番会となり、10月3日(日)に宇都宮・大田原・栃木・小山の四会場で各支部の協力のもと相談会を実施した。(資料〔Ⅵ〕)なお、小山会場においては、行政書士会も加わり三士会での相談会であった。